couldはcanからの「2つの距離」を表している

 助動詞に込められた細かい感情表現を理解しておかないと、文章を読んだ時に浮かぶ背景や状況がまったく異なってくることがあります。


◎ 助動詞の過去形は「2つの距離感」を表す

 助動詞の含むニュアンスについて、もう少しだけ解説をしておきましょう。前の記事で、「will」の過去形である「would」の話をしましたが、「can」「will」「may」の過去形「could」「would」「might」についても、日本人はなかなか本来の意味をうまくつかめていないように思います。

 これらの助動詞を過去形にすることで、何を表現しているのかということを一言で言うなら、それは「距離感」です。ややこしいことは、このときの距離感に「2つの方向性」があるということです。


「2つの方向性」

① 「現在からの時間的な距離感」

 現在から過去に遠ざかっていく際に使います。要するに普通の過去形ですね!

I can see it. (ぼくには見えているよ)

I could see it. (ぼくには見えていたよ)

(なぜこんな不気味な例文を考えたのか笑)


② 「現実からの仮想的な距離感」

 この場合の "I could see it." には「[見ようと思えば]ぼくには見えるよ」という意味合いが出てきます。つまり、文法的には過去形だけど、意味的には「現在」のことを語っています。


 では、現在から遠ざかりつつ仮定的な方向に進み、さらに現在から遠ざかった過去のことを表現したい場合はどうするかというと、次のようになります。

I could have seen it. 

([見ようと思えば]見ることができたのに)

 助動詞の過去形には、このような仮定的な意味があるということを理解しておくと、英語を読んだり話たりするときにも断然違ってくるはずですね。


◎ 「過去形にすれば丁寧」というわけではない

 さて、ここまで助動詞による微妙なニュアンスの表現方法について、主要なものをピックアップして紹介してきましたが、最後に注意をしておきたいことが1つあります。


 よく「Could you~?とCan you~?では、前者のほうが丁寧です」などと解説されている参考書を見かけますが、「使える英語」という観点から言うと、かなりズレた議論だと思います。それはなぜか?

 こう言ってしまうと元も子もないですが、すべては「言い方」次第だからです。


 親しみやすく、相手に愛情や思いやりが感じられるような言い方で"Can you ~?"を使うのであれば、決して失礼ではありません。逆に上から目線で"Could you please~?"なんて言ってしまうと、嫌味を込めた慇懃無礼な人と受け取られることもあります。

 これは日本語でも同じですが、やはり英語でも声のトーンや言い方、文脈などによって、書き言葉では十分に表現できない感情が伝わる訳です。


今日はここまで!

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